子どもがダウン症と診断されたご両親へ

　「ご出産，おめでとうございます。」
　多くのこの言葉に，素直に喜べない気持ち…。
　待ちに待った自分の子どもの誕生を自らが心から祝福できない葛藤…。

　でも，よく考えてみてください。それはなぜですか？
　『ダウン症』だから？染色体異常だから？障害児だから？

　本当にそうですか？

　では，その子が他の病気だったら良かったの？

　違いますよね？

　そう，『我が子の健康』を願う気持ちは，親であれば当然の気持ちです。ダウン症に限らず，子どもが何か重い病気かもしれないと告げられれば，困惑し，不安になるのは当然の反応です。あなたは特別でも，悪い親でもない。子どもの健やかで康らかな成長を願っている至って普通の優しい父親，母親です。ダウン症児にとって，発達障害・知的障害はほぼ必発と言われていますが，それは何もダウン症に限った事ではない。誰が障害を持つかなんてことは，誰にも分かりません。そして，ゆっくりではありますが，その子はきちんと成長していきます。その姿に癒され，心から祝福できる時が必ずやってきます。

　最後にもう一度。

　あなたも，その子も特別じゃない。誰も悪くない。受け入れには時間はかかると思うけど，大丈夫。近いうちに笑える日が必ずやってくるから。

ダウン症とは

　『ダウン症は病気じゃない，個性です。』という言葉はよく聞かれますが，これは逆に無理があると思います。やはり『ダウン症』は病気です。そして，正式には，『ダウン症候群』といいます。『症候群』とは，さまざまな病気の集まりを意味します。
　原因は21番染色体の過剰によります。染色体とは私たちの細胞一つ一つの中にある生物の設計図が記されている巻物で，人には23対（合計46本）の染色体があります。ダウン症の子はこのうち最も小さい21番染色体が3本となり，合計47本となっています。
　設計図が異なっているため，当然うまく体を作ることができず，さまざまな病気を持って生まれてくることが多いです。心臓の隔壁に孔が開いていたり，消化管が狭いもしくは閉じていたり，甲状腺などのホルモンや血液の成分がうまく作れなかったり。それらは単一のこともありますが，複数認められることもあるため，『症候群』となります。程度もさまざまで，生まれてすぐに手術が必要になるものや，数か月待ってから手術を行うもの，手術は必要のないものまであります。
　また，成長の過程では，呼吸器や免疫が弱いため，RSウイルス感染により重症化しやすく，耳と鼻をつなぐ管が細いため，中耳炎になりやすいと言われています。このために言語の発達が遅れてしまうこともあります。目にも異常が出やすく，斜視と言って，右目と左目の向きが合わなかったり，視力が弱い，白内障を持って生まれてくるなどがあります。さらには，筋力やじん帯が弱いため，関節が弱く，特に首と頭をつなぐ関節が弱いことが問題となることもあります。しかし，現在はこれらに対する医療が適切に提供されており，ダウン症児の寿命は60歳以上とも言われるようになりました。
　一方，精神や知能面での発達の遅れはほぼ必発と言われており，社会的なサポートが必要となる事もまた現実です。今後，社会がどのように変わっていくのか分かりませんが，現状，特に成人期以降のサポートが果たして充分であるかどうかについては正直，疑問が残ります。

　しかし，冷静に考えると，ダウン症の子どもたちが生まれてくることって，すごく不思議なことだと思いませんか？
　だって，異なる設計図から作られた飛行機が飛びますか？ビルが建ちますか？ということです。
　実際，21番染色体が3本ある子どものうち，およそ80％は流産になり，残りの20％だけが生き残ってこの世に生まれてくると言われています。
　きっと，成長の過程で，試練を乗り越え，自ら修正し，必死で生まれてきたんでしょうね。
　この事実は単純にすごいと思いますし，誇らしく思います。