今日は福祉施設を運営する方向けの、法律とお金の話です。
ご存じのように、当法人は2026年4月に障害者グループホーム(以下、GH)を開所しました。この建物について、土地は借地ですが、固定資産税が非課税となりました。
話を聞くと、固定資産税を支払っているNPO法人も多いようです。
そこで今回は、なぜ当法人のGHは固定資産税が非課税となったのか、その経緯を解説したいと思います。
同業者の参考となり、その結果、少しでも障害児・者支援に使えるお金が増えればと思っています。
社会福祉施設の固定資産税は非課税?
そもそも、社会福祉法人が社会福祉事業の用に供する固定資産については、地方税法上、一定の要件のもとで固定資産税が非課税となります。
そして、社会福祉法人でなくても、一定の要件を満たす「その他の者」について、同様に非課税となる仕組みがあります。
また、自治体によっては、NPO法人などを対象とした独自の減免制度を設けている場合もあります。例えば、登別市では独自の減免基準が設けられています(参照)。
そこで私は、
「ここ釜石でも、なんとか固定資産税がかからない方法はないのか?」
と調べ始めました。
詳細を見るには、自分で法律を読むしかない
以下は、私が調べた法律・政令・省令・厚生労働省の資料をたどって、根拠となりそうな部分を整理したものです。


まず、地方税法第348条には、固定資産税を課することができない固定資産が列挙されています。
その中の第2項第10号の7には、
「社会福祉法人その他政令で定める者が社会福祉法第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する固定資産で政令で定めるもの」
とあります。
ここがポイントです。
「社会福祉法人」だけではなく、「その他政令で定める者」も対象になっています。
そこで、次に地方税法施行令を確認しました。
地方税法施行令第49条の15を見ると、対象となる「者」が列挙されています。
そして第1項第6号に、
「前各号に掲げる者以外の者で総務省令で定めるもの」
とあります。
つまり、ここからさらに総務省令を見る必要があります。
そこで、地方税法施行規則第10条の7の3を確認しました。
すると、第1項第4号に、次の規定がありました。
「認知症である老人、身体障害者、知的障害者若しくは精神障害者又はこれらの者、身体障害児若しくは知的障害児の家族その他の関係者により組織される団体(法人格のない団体を含む。)で営利を目的としない団体であることについて都道府県知事が証明したもの」
つまり、大きく整理すると、次のような要件です。
① 認知症の高齢者、障害者・障害児、その家族、その他の関係者によって組織されていること
② 営利を目的としない団体であること
③ 都道府県知事の証明を受けていること
当法人は、設立発起人が障害児の家族であり、そこを中心として支援者が集まって組織された法人です。
したがって、①については該当する可能性があります。
②についても、当法人は特定非営利活動法人(NPO法人)として活動しています。
ただし、ここで一つ注意が必要です。
「NPO法人だから自動的に対象になる」ということではありません。
NPO法人という法人格そのものだけでなく、法令上の要件を満たしていることについて、都道府県知事の証明を受ける必要があります。
ここまで調べて、
「もしかすると、NPO法人でも固定資産税が非課税になるのでは?」
というところまで来ました。
しかし、まだ確信は持てませんでした。
「その他の関係者」とは誰なのか?
すると、以下の厚労省の事務連絡、Q&Aに書いていました。
Q 「その他の関係者」とは、どのような者か。
A 例えば、認知症である老人、身体障害者、知的障害者若しくは精神障害者又はこれらの者、身体障害児若しくは知的障害児の家族の支援者が考えられます。
Q 当事者とその家族の構成比率が一定以上であることを考慮すべきか。
A 一律に一定の比率以上であることを要件とする必要はないものと考えられます。
つまり、少なくとも厚生労働省の考え方では、当事者・家族だけではなく、これらの方々を支援する人たちも「その他の関係者」に含まれ得るということです。
また、当事者や家族が一定割合以上含まれていなければならない、という一律の基準も設けられていません。ここは非常に興味深いところです。
しかし、最終的には、個々の団体について都道府県知事による証明を受ける必要があります。
これは、北海道のホームページには申請方法が出ていましたが、残念ながら岩手県にはありませんでした。
記載されている都道府県の方が少ないように思います。
根拠をもって市役所へ
ここまで調べて、掲載した法律・政令・省令・厚生労働省の資料をもって、市役所の税務担当に相談に行きました。
もちろん、その場で結論が出るような話ではありません。
市でも確認・調査していただき、後日回答をいただくことになりました。
数か月待ちましたかね。
そして結論として、
「都道府県知事の証明があれば、非課税の対象となり得る」
との回答をいただきました。
そりゃそうですよね。
法律、政令、省令。
順番にたどって、書いてあることをそのまま読めば、そういう結論になります。
やはり『知事の証明』が最後の関門
ということで、あとは、
県が証明してくれるかどうか。
ここが最後の関門です。
そして、うれしいことに、市の担当者が県の窓口まで調べてくれ、手続き方法についても問い合わせてくれていました。
市からの問い合わせを受け、県でも確認していただき、県庁の障がい保健福祉課が窓口となって、確認・証明手続きを進めてもらえることになりました。
県庁とのやり取りも比較的スムーズに進み、そしていただいたのが、冒頭に掲載した証明書です。
その後、市に固定資産税の非課税申請書を提出し、無事に受理されました。
自ら動くことの大切さ
今回のGHクラスの建物になると、固定資産税だけでも数十万円規模になります。
そのお金があれば、ユニバーサルビーチを開催できます。
もちろん、非課税になるかどうかは、それぞれの法人の組織や事業内容、施設の用途、そして都道府県による証明など、個別の確認が必要です。
「NPOだから非課税」ではありません。
一方で、
「NPOだから固定資産税がかかる」
とも限りません。
ここは、今回私自身が調べてみて初めて知ったところでした。
おそらく、何も調べずに相談に行っていたら、誰にも気づかれず、そのまま課税されていた可能性もあります。
実際、同じようなNPO法人で固定資産税を支払っているところは少なくないように思います。
今回の件で改めて感じたのは、
制度は、知っているだけではなく、実際に根拠を調べて、使えるところまで動いてみることが大切だ
ということです。
法律、政令、省令。
一つずつ追いかけていけば、意外なところに道が見つかることがあります。
知は力なり、ですね。
私たちNPOにとって、限られた財源をどう使うかは非常に重要です。
利用できる制度を知らないことで、本来、支援に使えるお金を失っているとしたら、それはもったいないことです。
釜石市と岩手県の担当者の方、ありがとうございました。
少しでも参考になればうれしいです。
問い合わせはコメントに
コメント欄を有効にしておきますので、今回の制度について問い合わせがありましたら、コメントください。
分かる範囲でお答えします。
なお、今回の記事は当法人(岩手県釜石市)の事例をもとにした情報提供です。
非課税の適用については、法人の組織形態、事業内容、固定資産の用途、都道府県による証明などによって判断が異なる可能性がありますので、実際に申請される場合は、所在地の市町村および都道府県の担当窓口にご確認ください。
文責:横沢友樹


